ダイエット薬ウゴービ(セマグルチド)とは?
基本情報
- 一般名:セマグルチド(Semaglutide)
- 商品名:Wegovy(ウゴービ)、糖尿病治療薬としてはOzempic(オゼンピック)、経口薬はRybelsus(リベルサス)
- 製薬会社:ノボノルディスク(デンマーク)
- 剤形:週1回の皮下注射(ウゴービ/オゼンピック)、毎日内服(リベルサス)
- 承認状況:2021年に米国FDAが肥満治療薬として承認、日本でも2023年に肥満症治療薬として承認済み。
作用機序(どのように効くか)
ウゴービの有効成分「セマグルチド」は、GLP-1受容体作動薬に分類されます。
GLP-1は腸から分泌されるホルモンで、食欲や血糖値の調整に深く関与しています。
主な作用は:
- 食欲を抑える(脳の摂食中枢に働きかける)
- 胃の動きを遅らせ、満腹感を持続させる
- インスリン分泌を促進して血糖値を下げる
これにより「少ない食事量で満足しやすくなり、自然に体重が減る」効果が得られます。
効果(臨床試験の結果)
ウゴービは臨床試験(STEP試験)で非常に強力な効果を示しました。
- 68週間の試験で平均15%の体重減少
- 体重100kgの人なら、約15kg減る計算
- プラセボ(偽薬)群では約2%しか減少しなかったため、有効性は明確
また、糖尿病を合併していない肥満患者でも同様に大きな体重減少効果が得られています。
副作用と注意点
主な副作用は消化器症状です。
- 吐き気
- 下痢
- 便秘
- 腹痛
- 食欲不振
ほとんどは軽度ですが、投与初期や増量時に強く出ることがあります。
また、膵炎・胆石・腎機能障害など重度の副作用リスクも報告されているため、医師の管理下での使用が必要です。
禁忌
- 妊婦・授乳中の女性
- 重度の消化管障害を持つ人
- 膵炎の既往がある人
- 特定の甲状腺腫瘍の既往がある人
日本での使用状況
日本では2023年に肥満症治療薬として承認されましたが、使用対象は限定されています。
- BMI35以上の高度肥満症
- またはBMI27以上で合併症(糖尿病・高血圧・脂質異常症など)がある場合
つまり「美容目的のダイエット薬」としては処方されず、医学的に肥満症と診断された患者に限られています。
世界的な人気と課題
- 米国や欧州では「奇跡の肥満治療薬」として爆発的に普及
- ハリウッド俳優やセレブの使用報道で需要が急増
- 供給不足により糖尿病患者が薬を入手できない問題も発生
特に米国では「オゼンピック・フェイス(急激な減量で顔がやつれる)」など新しい言葉が生まれるほど、社会的インパクトが大きい薬です。
チルゼパチド(マンジャロ)との違い
- ウゴービ(セマグルチド):GLP-1受容体作動薬
- マンジャロ(チルゼパチド):GLP-1+GIPの二重作用薬
臨床試験ではマンジャロの方が体重減少率が大きいと報告されていますが、ウゴービはすでに多くの国で承認・利用が進んでおり、安全性データが豊富という強みがあります。
まとめ
ウゴービ(セマグルチド)は、GLP-1受容体作動薬として食欲抑制と血糖コントロールを行い、劇的な体重減少をもたらす肥満治療薬です。
世界的に「ダイエット革命」を起こしている薬ですが、副作用や供給不足といった課題も抱えています。
日本では対象が限られるものの、今後適応が拡大されれば、生活習慣病や肥満症の治療における中心的存在となることが期待されます。